オルタナティブデータという言葉をご存じでしょうか。
現在は投資家や金融関係で登場することの多いキーワードです。
だから、
「投資家でもなく金融市場で仕事をしているわけでもない。」
こう言ってしまっても良いのでしょうか?
そんなことはありません。私たちにとってオルタナティブデータは関係ないとは言えません。
オルタナティブデータは近い将来、マーケティングにも影響してくることは確実だと思っています。
1: オルタナティブデータとは
オルタナティブデータとは「非伝統データ」と訳されます。
これはどういうことかと言いますと、非伝統の反対にある伝統データを知る必要があります。
ここで言う「伝統データ」とは、次のような情報を表しています。
- 企業の財務情報
- 企業の株価情報
これまでも、現在も活用されている情報です。
しかしこの情報、いくら大量にあっても、分析するアルゴリズムを複雑化しても、結局は誰もが手に入れられる情報ですから、独自の判断に使うには限界があります。
要するに情報の出所は同じであり、その情報を誰もが手に入れているため、どれだけこねくり回しても出てくる結果は近い結果になる。すなわち「差別化」や「独自性」の薄い判断しかできないということです。
これは日本の書店にも並ぶ「会社四季報」を思い出すとわかります。
学生でも会社員でも、経営者でも、誰でも同じ情報を簡単に手に入れることができます。手に入れた人は、同じような学習から知識を得ていたとすると、同じような結論へ行きつくはずです。
これが伝統データです。
対して「非伝統データ」である、オルタナティブデータとは何かといいますと、
- 企業にまつわるニュース
- 企業が開催するイベント会場に近いホテルの予約状況
- プリペイドカードの決済データ
などのように、他社は手に入れていない、これまでとは視点の違う情報のことを言います。
2: オルタナティブデータの活用事例
では、このようなオルタナティブデータはどのように活用できるのでしょうか。
例えば日経新聞で発表されていた事例ですと、アップルの売上高の下方修正がニュースなどで伝わると、ニュースの内容をテキストマイニング(文章から決まったワードを掘り起こすことです)し、そこから一定の単語の数を点数化。点数化された結果によって、株式市場の心理を読み解き、強気になるのか弱気になるのかを判断したということです。
また、別の事例ですと、米国のホテルの予約状況データから、ホテルを運営する会社の業績を決算発表前に予測する。
テーマパークやイベント会場などに近いホテルの予約件数を入手することで、施設の入場予測も可能。
また、スタバにあるようなプリペイドカードの利用状況から、カードでの売上高を割り出すことで、熱心なファンの増減を予測することもできると。
このようなデータを大手企業だけが囲い込み使うようになると、投資や金融以外にも必ず影響が出てきます。そして資本主義の市場では、入手することが困難なオルタナティブデータであればあるほど価値が高くなり取引も高額になります。よって、ますます大手企業以外では手を出すことができないというサイクルが出来上がる可能性があります。
3: 今後のマーケティングへの影響
ここまでお読みいただくとわかっていただけると思いますが、こういった非伝統データはマーケティングにも影響してきます。
事例でお伝えしたプリペイドカードなどは典型です。
これまでだと、スタバの年間利益くらいからしか判断出来なかったマーケットの状態が、実際に存在する熱心なファンの行動を掴むことで、新しいキャンペーンなどを計画しやすくなります。
また、キャンペーン中のプリペイドカードの使用額や、プリペイドカードの購入額を分析することで、店舗系では難しかったキャンペーンに対するレスポンス結果も見えてくることでしょう。
もし、私たちのビジネスがレジャー産業に関連するものなら、イベント会場に近いホテルの予約状況がわかると、移動式店舗で販売するという方法を取ることができるかもしれません。
これまでは外側から見えなかった「非伝統データ」。
こういった新しい視点を取り入れることで、ネット時代、プラットフォーマー時代のビジネスにも勝ち続けることができるのだと思います。
さいごに
大きな会社だけのこと。
投資家や金融関係だけのこと。
そんな風に思ってしまい、こういった内容に興味を持たないと、あっと言う間に先を越されてしまいます。
これは過去を振り返ると分かることですが、インターネットも登場したとき、株式業界、IT業界、軍事関係以外で何に使うのかという空気がありました。
しかし、それからたった10年、小さな個人店舗でもインターネットを使わないと仕事が出来なくなっています。
社員が5名以上いる会社なら、ホームページを持っていて当然な時代です。無いと不信感を持たれる可能性が高いくらいです。
新しい情報は、そのものを活用できるかどうかより、新しい視点を知ることの方が大切です。
オルタナティブデータを私たちが入手し活用するかどうかよりも、ライバルや関連する業界の「表には出ない情報」をリサーチし、そこから新しい事業へと発展させることが大切だということです。
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